プライヤー

ナロディちゃんは、今日も任務を遂行すべく、幾つかの
部屋に入った。
お行儀のいいひともいれば、殺人の現場みたいに散らかした
海外のにわか成金の部屋もある。

違和感を感じた。

Tさんが就任したときの記事、
また、あるいはK氏が暗殺されたときの記事が一面に載った
新聞は、皆がくしゃくしゃになるまで読んでいた形跡があるのに
今日の事件の記事は、たぶん誰も読んでいない。
サラッピンのビニル袋に入ったまま置いてある。

そうなんだな。観たくないんだ・・・・。

ナロディちゃんのお友達は、パンを焼きながら待ち焦がれて
いるそうだが、長い長い時間そうしていたようだが、
最近なんかそわそわしているらしい。
ラジオを聴いてその手がたまに止まっているらしい。
なにか手につかないらしい。

そんなことには、ナロディちゃんは全く関心がないが、
洗濯した明日の制服にスチームアイロンをしたいのだが、
今日もスチームのボタンを押すとへっこんだままで、
なかなかうまくかけられない。

「やっぱ、コードレスにしたかったな。お買い得だって店員が
言ったからお前を買ってやったんだぞ!」

いつもは軽く、手元にあった100円ライターか、テレビのリモコンかで
カンカンと叩いて、ボタンを押せる位置までポンと戻すのだが
今日はいうことをきかない。

お前は捨てる!アホンダラ!
そう言って一旦ゴミ箱にアイロンをぶち込んだのだが
まだ熱い。
だからちょっと冷静になった。
腹たちまぎれに手にちょっとやけどしたのもある。

仕事の昼間は指令のPHSが頻繁になって、何回も手配のやり直しを
させられてイライラしていたから、工具入れにあったプライヤーで
ボタンをガンガンガンっ!と叩いてやった。
今度いうことをきかなかったら殺すぞ!と。
ひとのアゲアシとるんじゃねえ!
なんかゴッチャになってきた。

スチームボタンはピタリと元の位置に戻った。
その黄色いボタンは筋状の傷がついてしまったけれど。

ごめんね。

ナロディちゃんはそう言いた。

本当に疲れている。
私は今日は本当に疲れたと。
そう思った。

お友達はゆっくりとずっと疲れていたんだろうな....。

そう思った。

こんどいうこときかなかったら殺すぞ。
人差し指をたててそう言った。

ナロディちゃんはアイロンがけを始めた。

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